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一七世紀のヨ-ロッパにおいて現代科学というものが形をとり始めたとき、また一八世紀になってそれがさらに発展したときでさえ、職業としての科学者という概念は知られていなかった。
科学的な問題に関心をもっていた人たちはもちろん、それを意欲的に研究していた人たちは、上流階級の教養の高い人たちがほとんどであった。
実際、こうした状況は一九世紀の半ばに入っても続いていた。
このことは世界最古の科学学会であるイギリスの王立協会、一六六0年創立の会員選挙によっても立証されている。
今述べた数世紀を通じて、十分な教養のある知識人ならば、当時発見され議論されていた科学、その頃の呼び方では「自然の知識」の大部分を理解することができるのがふつうであった。
しかしながら、一九世紀の後半になると科学の進歩が加速し、学問的訓練を必要とするまったく新しい研究分野がいくつか誕生した。
結果として、科学の追求は趣味ではなくなり、職業となったのである。
過去数十年間に私たちが目撃したものは、紛れもなく知識の大爆発であった。
ますます複雑さを増す何百という新しい課題、巨大で金のかかる研究プロジェクト、さらに、高度に特殊化した科学者の大軍が世界中に誕生した。
しかしながら、通常の人々は、概してよく教育されているとはいえ、このような想像を絶するほど複雑な専門家以外の人にとっては困惑するばかりで到底理解できない新しい考えの時代のなかで、ずっと置き去りにされているのである。
もしも科学の進歩の技術的な成果が、社会の機能の仕方や、さらに重要なことに、社会の一員である個人の考え方や生き方に多くの影響を及ぼすことがなかったならば、おそらく大した重要性をもたないであろう。
食物や人間の生殖に対する遺伝子操作について、汚染や環境に及ぼす技術的進歩の影響について、そして、全世界に浸透するマスメディアの人々の行動に及ぼす影響について、現在世間一般が感じる深刻な不安は、窺い知れない不気味な科学の進歩の結果であると人々が認識しているもののほんの二、三の例でしかない。
科学に対して一般大衆が抱く当惑の明らかな結果として、欧米諸国で顕在化している現在の反科学運動をあげることができる。
このような反科学運動は、科学と科学者に対して向けられているのみならず、科学の進歩が提供する新技術を採用する多国籍企業に対しても向けられている。
科学者たちが、自分たちの高度で専門的な研究が何であれ、一歩前に踏み出すことによってその本質を説明することに総じて消極的であり、また、科学者たちが、とくにタブロイド新聞の絶え間ないヒステリーをまえにして、自己主張することによって最近の科学的進歩が人類に与えた大きな恩恵を明確にすることを篇路していることは、非常に残念なことである。
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